本稿では、堀辰雄の「鳥料理 A Parody」の作品分析を試みた。堀の習作期や初期の作品で多く用いられた夢が、中期以後の作品である「鳥料理」で再び用いられている点に注目した。副題に「A Parody」と付されているところから、従来この作品は堀辰雄自身をパロディしている作品と捉えられてきた。しかし、作中で窺える「私」の夢認識が堀のそれと明確にずれているところから、作中の「私」=堀辰雄という短絡的な図式には首肯しがたい。むしろ、この作品は、創作方法として夢を用いることや夢を意識的創作より優れていると堀が見做していたシュルレアリストをパロディしていると捉えられる。従って、この作品で見られる堀の批評は、まず大正初期に始ったシュルレアリスム受容が、1930年以後本格化し、それに伴って量産されていく夢に纏る言説に向かったと言える。そして、このような批評性は、シュルレアリスムとは異る形で創作において積極的に夢を用いていた初期の堀自身の創作法にも向けられていたとも言える。「鳥料理」以後、夢を扱った作品を書いていないところからも、この作品が堀において夢という手法との訣別を表明していると捉えられる。初期から中期への移行において、堀は夢のトリックという創作方法を捨て、現実の重層的な認識に対応しうる創作方法に移行していったのである。
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