本稿では、結果表現、様態修飾表現として使われる「厚く」の成立について記述的な考察を行い、「厚く」の成立条件と意味を明らかにした。「厚く」はその成立に関して(1)と(2)のような対立を示す。(1) a. お肉を厚く切って煮込んだ。 b. 当時、ほとんどの女性たちがファンデーションを厚く塗り、細い眉を描いていた。(2) a.*布団を厚く敷いて(寝た方がいいですよ。)、b.*(時々せきをして寒気がしたため、)毛布を厚くかけて…。考察の結果、「厚く」はイベントの性質によって(3)のような二つの成立条件をもち、このような成立条件によって(2a,b)の不自然さを説明することができる。(3) a.「切る」系(「分離」型):本体から分離した結果できあがったものの厚みが普通より大きい。b.「塗る․積もる」系(「付着・堆積」型):複数、多量、大量の構成要素を集めたり、重ねたり (集まったり、重なったり)することによってできた状態の厚みが普通より大きい。つまり、(3b)の成立条件に従うと、「敷く」や「かける」の対象項になる要素は大量、多量に集められるか重ねられる要素でなければならないが、「布団」「毛布」という対象項の性質を考慮したイベントの性質上、(2a,b)はそのような条件と矛盾するため、不自然に感じられるということである。
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